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何度目かの「スロウハイツの神様・辻村深月」を読み終えて・・・。

一時期、小説にはまって毎日のように活字を追いかけていました。

筆者はもともとは言語障害なのか、国語の現代文でも3行くらいしか読めなくて、それ以上読もうとすると頭から内容が飛んでしまいます。

ですから、学校の勉強はなんでもできたのに国語だけができなかったです。

いつも国語だけが平均点を20点くらい下回っていました。

そんな筆者が本を読んでいる人に憧れるのは当然であり、二十歳くらいの時に一念発起をして、一冊の小説を読み終えてみようと思いました。

その時に人気だったのが村上春樹さん。

その中でも人気だったのがノルウェイの森でした。

本屋で単行本を上下巻買い、これを無駄にしないためには読みきらないといけないと自分にプレッシャーを与えて活字に挑みました。

その試みは成功しました。

というのも、筆者はメンヘラで心が病んでいたので、ノルウェイの森がドンピシャだったのです。

たまに、この小説は自分のことを書いているのだろうか?って作品に出会うことがあると思うのですが、まさにノルウェイの森がそうでした。

こう言ってしまうと、筆者は精神病なのだろうと推測されるのですが、今から思い返してもその通りなのだから仕方がないです。

 

3行しかまともに読めない人間が、一冊も本を読むことができるのだろうか・・・。

という心配は杞憂に終わりました。

気づけば本から離れられなくなり、ひたすら活字を追っていました。

頭の中ではまるで映画が再生されているかのように、ありありとした情景が浮かんでいました。

心は常にハラハラと踊りだし、たまにきゅうっと締め付けられたり、とろうんと温められたりして、泣きそうになりながら本を読んでいました。

小説って素晴らしいと感じた瞬間でした。

それからは村上春樹さんの本を全部読んでいますが、途中からは文章のうまさに目が言って最初の頃の作品のように感情移入ができなくなっていました。

というのも、筆者が小説を書くようになったからだとも言えます。

自分の小説を添削していると、他の人の小説もそういう目で見てしまうのですよね・・・。

これは本当に困りました。

純粋に物語を楽しめない。

そう思いました。

 

ちょうどそのくらいの時に、とんでもない作品に出会いました。

 

それは筆者が初めて夜通し読み通した本です。

すでに単行本になっていて、なんとなく拍子を見て面白そうと思って手に取った本です。

上下巻あり、とても長い小説でした。

それはある小説家のデビュー作。

その方はこれを大学生の頃に書いている。

そしてメフィスト賞を受賞してデビューした作品でした。

この事実に大変驚きでした。

この、衝撃的な作品が、素人だった頃に書かれたものということに、この人はどれほどの才能があるのだろうと思いました。

その作品とは、

辻村深月さんの、

「冷たい校舎の時は止まる」

です。

 

眠たいから寝ようとするのに、あと1ページだけと続けていくうちに朝まで読み通してしまった本でした。

こんな経験は初めてでした。

それまではノルウェイの森が一番だったのに、それを追い抜いたのかもしれない。

そう思いました。

それから辻村深月さんの作品をすべて読んでいます。

初期の作品はどれも大好きです。

なんて言ったらいいのかわからないけれど、子供の頃に大事にしていた温かい気持ちに気づかせてくれるし、トリックのような部分で驚かせてもくれる。

現在では直木賞を取られているから、これ以上言う必要もないと思います。

 

最近は小説も読まなくなったな〜って思い、なんとなくまた読んでみようと思って、もう手元にはなんの本も残ってなかったから図書館で借りてきた。

それがスロウハイツの神様でした。

なんとなくしか内容を覚えてなくて、読んでいる途中からなんとなく思い出してきて、そしてとうとう最終的にはハマるという・・・。

自分はこれがしたかったんだなって思い出せた。

なのに今の自分は全然できずにいる。

できる年齢なのにやらないでいる。

明日からまた頑張ろうって、今、筆者は燃えています。

一晩寝たら消えているのかもしれないけれど、この情熱は久しく忘れていたもの。

生きる希望に思えました。

本当に素晴らしい小説だな・・・。

 

 

一度、偶然なんですけれど、ある本屋さんで見かけたことがあります。

サイン本を書きに来てたみたいで、館内放送みたいなこともしていました。

この奥にあの辻村深月さんがいてるのか・・・って思っていたら、なんと本人が出てきまして、本屋の店員さんとさよならの挨拶をしていました。

筆者は握手をお願いしようかとか、本を全巻持ってるんですって伝えてサインをもらおうかとか考えたのですが、全く勇気がでずにそのまま見送りました。

あの時、勇気があれば・・・。

そう、勇気があれば・・・。

自分に足りないのは勇気。

勇気がほしい。